目次

1 筋力アップ
2 体が丈夫になる
3 脳を刺激する
4 血流促進(体が温まります)
5 ストレッチで血管が若返る
6 脳を鍛えるには運動しかない①
7 脳を鍛えるには運動しかない②
8 美と健康のために
9 太極拳で大腰筋を鍛えてアンチエイジング!
10 身体も心も活力を取り戻す

 

太極拳の健康効果1~筋力アップ・バランス感覚が養われます。

太極拳をやってよかったことのひとつは、下半身の筋力がアップしたことです。寝たきりになる主な原因は、脳卒中が第1位(約20%)、大腿骨頚部骨折が第2位と言われています。骨折につながるような転倒を防ぐためには筋力(特に太もも前、お尻、太もも後ろ、ふくらはぎ)をつけること、バランス力と柔軟性(特に股関節まわりの)をつけることが大切だそうです。
太極拳の動作はゆっくりですが、下半身の筋肉に負荷をかけ続けるので、筋力アップが図れます(スロー筋トレ)。片足で立つ動作が多くバランス感覚が養われます。

スロー筋トレとは
軽い負荷でも筋肉に負荷をかけ続ける運動をおこなうと、筋肉内の血流が制限され酸素不足になり、ハードな筋トレと同様に筋肉が張った状態になります。そこで脳が激しい運動をした時と同じように、筋肉の発達を促し新陳代謝を高める成長ホルモンを分泌します。その結果筋肉は太くなります。

成長ホルモンは、組織を成長させ新しくし、体を動かすために大切な腱や靭帯、骨を丈夫にします。骨粗しょう症の予防になります。また、新陳代謝を高める効果もあると言われています。(参考:ためしてガッテン2008年10月29日放送)

太極拳の健康効果2~経絡を刺激し、続けていると体が丈夫になります。

胃が丈夫になりました。自律神経の働きがよくなった感じがします。疲れやすかったのが、疲れを感じずに一日動けるようになりました。夜ぐっすり寝られて、よけいなことを考える暇がなくなり、精神的にも気持ち良く過ごせるようになりました。

太極拳の動きは経絡を刺激するので、続けていると内臓や体全体の働きがよくなります。体質が変わって、体が軽く動きやすくなります。

太極拳の健康効果3~脳を刺激する

太極拳の動作は難しいのでは?と質問を受けることがあります。確かに最初は難しいです。基本の歩法を身につけるだけでも時間がかかります。四肢のうちひとつだけなら真似できても、両手両足の動きを真似しようとすると脳力の限界を超えます。最初は歩法(足の動き)を覚え、次に手の動きを覚え、それから胴体の角度を確認し、両手両足のタイミングを意識し・・、そうやって少しずつ正確な動作を身につけていきます。できないことも楽しんで、繰り返し練習しているといつかはできるようになります。私も覚えるのは苦手です。急いで覚える必要はありません。
太極拳の動きはゆっくりなので常に自分の体の動きに意識を向けることができます。「こういう動きをしたい」と思っても思うようにできず、どうしたらできるのかわからないことがよくあります。筋肉と筋肉に指令を与える脳神経細胞がつながっていない感じがします。「どうしたらできるのか」と考えながらやっていると「あ、そうか!」とできる時があります。翌日にやってみると簡単にできることもあります。そんな時、今までつながっていなかった脳神経細胞がつながった感じがします。繰り返し練習し動作が身についた時には脳神経細胞が太くなっている感じがします。
太極拳を続けていると動作を真似る能力が高まります。真似るというのは対象の動きを認知し、同じように自分の四肢をコントルールすることですよね。脳のいろいろな部分を使います。太極拳は、体力作りだけでなく脳トレとしても有効です。

太極拳の健康効果4~血流促進(体が温まります)

太極拳をする前はホカロンが必要でしたが、体が温かくなり、不要になりました。

長時間同じ姿勢をとり続けていると、血行が悪くなってエコノミー症候群になったりしますよね。筋肉を動かすと、血管が収縮しポンプのようになって血液が流れ、 血流が促進されます。私は全身にきれいな血液がサラサラ流れている状態なら病気とは無縁ではないかと思っています。血液の流れをよくするには身体を動かすことが一番!下半身には全身の3分の2以上の筋肉が集まっています。足の筋肉を使うと血管が収縮弛緩し(心臓のようにポンプの役割を果たし)血流を促すので、「足は第2の心臓」と言われています。
太極拳は中腰で体重移動をしながら足の曲げ伸ばしを行います。太極拳は特に体の一番大きな筋肉である太ももの筋肉を使うので、全身の血流が促進されます。また胴体をひねりながら体を動かすので、胴体部分の血流も良くなります。動作を意識しながら四肢を動かすので脳の血流もアップします。
太極拳では股関節を緩め力を抜いたリラックスした姿勢でゆっくりと体を動かすので、血圧も上がりません。
身体の隅々にまで血液を流すため毛細血管が身体中を取り巻いています。毛細血管は細胞や臓器に酸素や栄養を届け、老廃物を回収しています。毛細血管は、ちょっと負荷のある有酸素運動をすることで増えると言われています。太極拳を行うと毛細血管も発達しますので、身体中の隅々にまで血液がめぐるようになります。

太極拳の健康効果5~ストレッチで血管が若返る

太極拳の動作をするためには関節の可動域が大きいこと、身体が柔らかいことも必要です。関節の可動域が小さい原因は、関節周辺の筋肉が硬くなり伸縮性がなくなっている場合が多いようです。日常生活でも、呼吸に関係する筋肉が固くなると息がしづらくなります。股関節の周辺の筋肉が硬くなると、腰や膝に負担がかかり痛めやすくなり、転倒の原因にもなります。
最新の研究によると、筋肉が硬いというのは、人間の体を構成するタンパク質の一種のコラーゲンが糖化してしまっていることが関係しているそうです。運動不足や糖質の摂り過ぎで糖とタンパク質が結びつくとコラーゲンが糖化します。血管の筋肉にあるコラーゲンが糖化すれば、血管が固くなり動脈硬化が進みます。そのため、40代以上の人の場合、体が硬い人は総じて血管も硬く、血管年齢も高くなっているそうです。
硬くなった筋肉はストレッチをすることで、柔らかくしなやかに生まれ変わります。ストレッチで筋肉を伸ばすと、その刺激で古いコラーゲンが傷つき、糖化したコラーゲンを壊し、新しいコラーゲンに作り替えてくれます。新しいコラーゲンがたくさんできれば筋肉は柔らかくなります。血管の柔軟性・伸縮力も高まり、血管年齢も若返るといわれています。
ストレッチを行って筋肉の柔軟性を高めることは、太極拳の動作が正確に出来るようになるだけでなく、全身のコラーゲンを修復し、若返りにつながります。 (参考文献「NHKためしてガッテン」2012vol.15)

太極拳の健康効果6~脳を鍛えるには運動しかない①

最近読んで面白かった本から。著者はアメリカの精神科医で、子どもの脳の成長や精神病の回復に運動が効果的であるという報告が書かれています。今回は加齢と運動についての内容を紹介します。
40歳を過ぎると、脳は平均して10年に5%ずつ減っていくそうです。脳の活動が減ると、脳神経細胞は縮み、脳に栄養を運ぶ毛細血管も萎縮していきます。
しかし運動は脳の衰えを防ぐだけでなく、老化に伴う細胞の衰えを逆行させるそうです。ラットの実験では運動は脳の神経細胞の発生や成長を促し、脳の回路の結合も増やすそうです。週2回運動していた人は、認知症になる確率が5割低いという報告もあるそうです。運動は老化とともに減少するドーパミン(意欲と運動システムの要の神経伝達物質)の量を回復させるので、意欲的になります。運動のストレスは脳細胞を少々傷つけますが、運動で傷ついた脳細胞はその後修復され、むしろ強くなりストレス回復力を増します。
ではアンチエイジングにはどういう運動が良いのでしょうか?有酸素運動、筋力、バランス、柔軟性の4つの領域がカバーでき、動きの複雑なものがよいそうです。
有酸素運動は脳の血流をよくし脳に酸素をたくさん供給し、脳の神経伝達物質や神経栄養因子を増やし脳の神経細胞のつながりを強めます。筋肉を収縮したり弛緩したりすると、成長因子が放出され脳の成長を後押しし、脳内に新たな毛細血管を作るそうです。有酸素運動によって神経細胞が増えます。しかしその神経細胞は使わないと死んでしまうそうです。
そこで、学ぶことが必要な複雑な動きの運動を行うと新たにつくられた細胞が生き残ります。動きが複雑であればあるほどシナプスの結びつきは複雑になります。初めはぎこちなくても、次第に脳の回路がスムーズに流れるようになり動きが正確になっていきます。そういう運動の一つとして太極拳が例示されています。
(参考文献「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ・レイティ NHK出版)

太極拳の健康効果7~脳を鍛えるには運動しかない②

前回に続いて、「脳を鍛えるには運動しかない」から、今回は「ストレスと運動について」の内容を紹介します。
私自身、何かに悩んでいても太極拳を行うとリセットされ、新鮮な気持ちで物事に対処することができるようになります。いらいらしている時でも、体を動かすと優しい気持ちが取り戻せます。どういうメカニズムでそうなるのでしょうか?
ストレスを受けるとホルモンやアドレナリンが分泌され、心拍数や血圧が上がり血管が収縮します。元来人間は危険に直面したとき「逃げる」とか「戦う」ということが必要だったため、ストレスが生じると闘争・逃走に必要な部位にエネルギーが集まり、それ以外の部位への血流は悪くなるそうです。血流が少なくなると、毛細血管が萎縮します。強いストレスが続くと脳神経細胞が傷つけられ、シナプスが蝕まれます。
ストレスでたまったエネルギーを発散させるためには、体を動かすことが効果的だそうです。運動をすると血流が良くなり酸素が体を巡り、脳内の神経化学物質が増加し、適当なレベルに調整されます。そのため思考回路が変わり、不安の流れが断ち切れます。
筋肉の収縮で増えた成長因子は、血流によって脳に運ばれ、傷ついた脳神経細胞も回復させます。動物実験でも慢性のストレスにさらされていたラットに運動をさせると、縮んでいた海馬の大きさが回復するそうです。
ではどれくらい運動をすると良いのでしょうか? 30分の運動を週2,3回でも効果はあるそうですが、理想的には週6日45分~60分行うと良いそうです。(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ・レイティ NHK出版)

太極拳の健康効果8~美と健康のために

美と健康のために 太極拳入門」(中野春美 土屋書店)の本から、太極拳の健康効果の内容を紹介します。(p164)
① 神経系統を目覚めさせます。(心を静め、視覚・聴覚・触覚・平衡感覚・方向感覚などたくさんの感覚を働かせます。ノイローゼやストレスを解消する効果があります)
② 心臓、血管・呼吸器系統を改善します。(気を丹田に沈め、横隔膜の運動が十分になされ、血液の循環がよくなります)
③ 骨格、筋肉、関節の老化を防ぎます。(筋肉・関節を動かします。)
④ 体内物質代謝による美容への効果があります。(呼吸での新陳代謝。発汗。コレストロール減少。腰を軸に胴体を動かすので腹部の脂肪を減らし、老廃物を体外に排出します)
⑤ 消化器系統の機能が改善されます。(横隔膜の運動により消化器系統の機能が調整されます)胴体をねじることで胴体の血流を促進し、内臓のマッサージ効果があります。

太極拳の健康効果9~太極拳で大腰筋を鍛えてアンチエイジング!

特に運動をしないでいると筋肉は 20 代に比べて 50 代で 30%、60 代で 40%、70 代で50%減るそうです。さらに 75 歳前後から落ち方が急になり、歩いたり体を支えたりという基本的な生活機能がガクンと落ちてくるそうです。
これまで、歩いたり走ったりする能力には太ももの筋肉が重要だと考えられてきました。しかしバルセロナオリンピック 400 メートル走で決勝進出を果たした高野進さんの太ももをMRIで撮影してみたところ、学生の陸上選手と比べて大きな差がなかったそうです。ところが大腰筋は驚くほど発達していたそうです。そうした研究から最近になって大腰筋が運動能力に重要な役割を果たしていることがわかってきました。また能楽師には80歳90歳でも現役で活躍している方がいます。能では、骨盤を水平にしてすり足で歩いたり、力まず腹に力を入れる稽古の過程で大腰筋が鍛えられるそうです。能楽師が高齢でも現役でいられるのは大腰筋が鍛えられていることが大きいようです。
大腰筋とは、腰の脊柱と太ももの大腿骨をつないでいるインナーマッスルです。大腰筋は上半身と下半身をつないでいる唯一の筋肉です。
高齢になりこの筋肉が衰えると、足を引き上げたり、大きく踏み出すことがだんだんできなくなります。わずかな段差でつまづいたり転んだりということが多くなります。姿勢も悪くなってきます。筋力は運動習慣があるかどうかで違いが出てきます。
太極拳の練習で行う中腰の姿勢、歩法、足上げなどのバランス動作、上半身の力を抜き体を水平でまっすぐな姿勢に保つこと、いずれもが大腰筋を鍛える運動になっています。太極拳で大腰筋を鍛えて、アンチエイジング!
参考文献
・「疲れない体をつくる『和』の身体作法」安田登 祥伝社黄金文庫
・「寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい」久野譜也

太極拳の健康効果10~身体も心も活力を取り戻す

「動きが脳を変える」(アナット・バニエル著 太郎次郎社)という本を読みました。太極拳をやるうえで参考になりますので、内容をご紹介します。
わたし自身、太極拳を始めた当初は動作を真似するのも大変でした。ある程度できるようになっても、教えられたように正確に体を動かすことがうまくできず、戸惑うことばかりです。でもそうしたプロセス自体を楽しんでいます。
動作ができた瞬間、神経細胞がつながった感じがします。繰り返し練習して簡単にできるようになったとき、神経細胞が太くなった感じがします。そういう積み重ねで自分の運動神経が発達し、脳が目覚めていくような感じがあります。 そうしたことがこの本によって、わかりやすく説明されていました。
誰もが子ども時代は新しいものを吸収し、活力に満ち、わくわくする経験を重ねます。しかし大人になると多くの人は、自動運転モードに入り、脳を使わなくなり、新しい回路をつなぐことをやめてしまうのだそう。
大人になっても、脳を活性化し身体も心も活力を取り戻す方法として、著者は「9 つの大事なこと」を提案しています。
1.「自分の動きに注意を向ける」と脳に新しい神経回路が作り出され、活力が高まり、身体も心も感情も自由になり、エネルギッシュになり、考え方も明晰でクリエイティブになる。
2.「学びのスイッチをオンにする」。注意を「今」に向けると自動運転モードを回避でき、脳が目覚める。動きに注意を向けると、脳のスイッチがオンになる。
3.「力を抜く」と、今この瞬間を感じる力が高まり、感覚が研ぎ澄まされ、わずかな違いが見え始め、脳は新しい情報を獲得できる。力を抜くと今を生きることができ、活力が目覚める。
4. 省略
5.「ゆっくり」は今を生きる第一歩。速く動くと自分が何をしているのかを知ることはできない。スローダウンすると、感じていることがより強く感じられ、自分の感覚や思考に気づきやすくなる。ゆっくりは、感じること、活力に満ちていきることを発見する手段。
6 ~9. 省略
太極拳で力を抜き、ゆっくりの自分の動きに注意を向けながら練習することは、そのまま身体も心も活力を取り戻し、脳が活性化する方法にもなっているのですね。